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ジヒン・ラズワンのコーチが語る、成長の過程

2020年4月13日

コーチのメルビン・ヨーはわずか5年足らずで、ジヒン・ラズワン(マレーシア)を普通のアスリートから、ONEチャンピオンシップのアトム級トップクラスの総合格闘家へと変えた。

ONEでフェザー級選手として戦った経験のあるヨーはマレーシアの総合格闘技のパイオニアでもある。マレー半島南端の都市、ジョホールバルにある自身の格闘技ジム「Ultimate MMA Academy」で、ジヒンの個人指導にあたり、スターダムへなり上がっていく姿を間近で見守ってきた。

この独占インタビューでは、ヨーがジヒンとの出会いや、直面してきた課題、将来の目標などについて語る。

ONEチャンピオンシップ:ジヒンが2014年9月に「Ultimate MMA Academy」に初めて来た時の印象は?

メルビン・ヨー:初めてジムに来た時、ジヒンのことはあまり知らなかった。当時はジムの何人かのコーチの下にいた。ブラジリアン柔術やムエタイ、総合格闘技のクラスにたくさん参加していた。

ある日、ジヒンがこれでお金を稼いでいきたいと言ってきて、2016年にコーチを担当することにした。マレーシア最大のアマチュア格闘技団体「Malaysian Invasion Mixed Martial Arts (MIMMA)」に申し込んで、トライアウトからタイトル獲得まで指導した。

ONE:自分で担当することに決めた理由はあるか?

ヨー:まず自分は、不特定の生徒たちに多くの時間を費やしたくないと思っている。彼らのほとんどは趣味でトレーニングをしているから。これで稼ぎたいという生徒もいるかもしれないが、たいてい1ヶ月もすればいなくなってしまう。

ジヒンに関して言えば、それは違った。本当にやる気のある生徒だと気づいたんだ。これをキャリアとして生きていけるとジヒンに伝えたし、そのための道筋もあった。自分の言葉とやりかたを信じてさえくれれば、可能性はある。つまり、自分はジヒンの可能性を見てトレーニングを担当することに決めた。



ONE:ジヒンが成功できると確信していたのか?それとも、まずは試して見てみようと思っていたのか?
ヨー: 両方だったと思う。当時の総合格闘技のレベルは今とは違った。

当時は、テイクダウンと打撃をうまく組み合わせることができなくても、勝つ方法があった。当時は非常に一次元的なものだった。スキルセットが1つしかない場合でも、対戦相手を倒せた。でも今は違う。成功するには、バランスの取れたアスリートである必要がある。

ONE:ジヒンがMIMMAの女子タイトルを獲得した後は?

ヨー:当時、ONEチャンピオンシップに送り込もうと考えていたが、気が変わって、代わりにさらに(MIMMAの最上級カテゴリーの)「MIMMA5」に出場させようと思った。その時点で、ジヒンには弱点が多いと批判されていたから、それが違っていると証明するために、いろんな格闘技競技で戦わせた。

ムエタイでのデビューで、彼女は第2ラウンドでのノックアウト勝ちで、(マレーシアの格闘技団体)「F3」のチャンピオンベルトを手にした。その後、別のムエタイイベントでもタイトルを獲得した。1か月後、同じくマレーシアの格闘技団体「Ultimate Beatdown」の「Super-16」というトーナメントに参戦するように言い、彼女は非常にタフなシンガポール人選手と戦った。幸いにもジヒンはなんとか戦い抜いた。

さらに2つのベルトを獲った。「MIMMA5」については、対戦相手が現れないことが何度かあってやめた。その後、2017年7月に、「Ultimate Beatdown」でプロになることを決め、その1ヶ月後にONEと契約した。

ONE:ジヒンはすぐさまONEでも通用することを示し、高いスキルを持つ選手を相手に3連勝した。その時のジヒンの最大の強みは何だったと思うか?

ヨー:非常に速く物事を学ぶ能力だ。自分に必要だったのは1つの事を教えることだけで、ジヒンはそれを吸収する。動きを実践することもそうだ。教えたばかりの新しいテクニックを、スパーリングで非常にうまく使って見せる。実践的な場面で使って見せて驚いたこともある。

それに加えて、彼女の頑固さは最大の強みの1つになった。見方にもよるが。どんなことでも、ジヒンは自分が正しいと証明したいと思っている。

ONE:ここまでのONEの戦いぶりは、自身の期待を超えているか?

ヨー:そうだ。長い間ONEを見てきたが、(アトム級は)これまでの比べてはるかに競争が激しくなっている。その中で3人の強豪を倒した。

例えばプージャ・トーマル(インド)は簡単な相手ではなかった。戦績がどうあれ、彼女は勝つために何をする必要があるかを知っている。プリシラ・ヘルタティ・ルンバン・ガオール(インドネシア)もまた、難しい相手だった。彼女は(2018年に) 6試合しているが、唯一の敗北がジヒン戦だ。ジェニー・ファンも質の高い選手だった。

自分は平凡なアスリートには満足しない。彼女にはアトム級最高の選手の1人になってほしいと思っていた。成長の余地は常にたくさんある。

マレーシアのスター、ジヒン・ラズワンが、2019年7月の勝利の後に母国の旗と共にポーズを決める

ONE:ジヒンはどれくらい成長の余地があるか?現在、どんなことに取り組んでいるのか?

ヨー:アトム級は毎年、厳しくなっている。ノックアウトやサブミッション、グラウンドパンチで苦しめる選手も増え続けている。今は、ジヒンの戦いをより面白くする方法に取り組んでいる。

誰でも戦うことができるが、ファンは特別な試合だけを覚えている。退屈な試合をしようとする選手がトップに立つことはできない。面白い試合をするのは一筋縄ではいかないので、今はそこに取り組んでいる。「すごい」瞬間をたくさん作って観客を驚かせ続けなければいけない。

ONE:次にジヒンと対戦してほしい選手は?

ヨーフィニッシュを狙ってくる選手だ。長い間、自分たちは寝技と立ち技に焦点を当てて取り組んできたから、ジヒンはそこに関してはかなりの腕になっている。もし全力でジヒンにぶつかってくる選手がいるとすれば、恐ろしいことかもしれないが、ジヒンにとっては完ぺきな対戦相手になるかもしれない。

ONE:最後に、今年はジヒンが何試合してほしい?

ヨー:少なくとも2回は戦う可能性があると思う。うまくいけばコロナウイルスの状況が5月か6月までには終わり、7月には今年初の試合ができるのではと思う。そして、今年後半にONEがクアラルンプールで大会を開くなら、もう1試合できればと考えている。