サイドストーリー

ミーシャ・テイト通信:「ONE: IMMORTAL TRIUMPH」開催目前のベトナムへ

2019年9月10日

ミーシャ・テイトは、ONEチャンピオンシップ副社長であり、総合格闘技で数々の世界タイトルを手にした女子格闘技界のパイオニア。不定期配信コラム「ミーシャ・テイト通信」、今回は9月6日に開かれた「ONE: IMMORTAL TRIUMPH」を前に訪問したベトナム・ホーチミンについてー。

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「ONE: IMMORTAL TRIUMPH」開催に向けてのコンテンツの制作のためにホーチミンに行くと聞かされた時、特に大きな期待は抱いていなかった。

もし何らかの期待があったとしても、実際の体験はその期待をはるかに上回っていたと思う。あの美しい街を去る時には、ベトナムについて多くのことを学んでいた。あんな風にベトナムに心を奪われるとは思ってもいなかった。

時々、旅で訪れた場所に特別なつながりを感じることがある。ベトナムはそういう場所の一つだった。格闘技についての見識を現地の人々に広めることが目的だったが、実際の体験はその反対だった。

ホーチミンはとても楽しい街だったし、人々の感じの良さも嬉しい驚きだった。道を歩けば、すれ違う人全員が笑顔で挨拶をしてくれるように感じた。

コーヒーが好きな人は、エッグコーヒーをぜひ試してほしい。私はコーヒーは飲まないが、少なくとも泡立てた卵のトッピングの美味しさは証言できる。甘くてベルベットのように滑らかで、デザートのような舌ざわりだった。クリーミーなメレンゲという感じだ。

食べ物も信じられないほど美味しかった。美味しいというより…「完璧」だった。焼いた牛肉と竹に詰めて炭で蒸したもち米は絶品過ぎて、2晩続けてベンタン市場で同じものを食べた。

私たちが泊まったのは1区で、時間の関係であまり遠くには行けなかった。食べ物以外には、何とか玉皇殿とノートルダム大聖堂を観光できた。それから、リキシャにも乗った。

1つだけやり残したのは、水上マーケットだ。ホーチミンからは、数時間かかる。今週末にまた戻るのだけれど、半日オフにしてそこまで行けるかどうかはまだわからない。もし可能なら、ぜひ行ってみたいと思っている。ホーチミンは「バックパッカーの街」という愛称がぴったりだったが、この街を体験した今、私はもっとベトナムを知りたくてたまらない気持ちになっている。

旅の間、ひとつ明らかなことがあった。ベトナムの格闘技ファンたちは、「ONE: IMMORTAL TRIUMPH」の開催を待ち望んでいる。いわゆるファン層と呼べる人口はそう多くないだろうと思い込んでいたが、それはまったくの誤りだった。ベトナムの人たちはONEが開催されることを知っていたし、ファンたちは心から楽しみにしてくれていた。

たった2日間の滞在でも、人々が格闘技をいかに愛しているかはよくわかった。

ビー・ニューイェンのトレーニング風景を見学しにサイゴンスポーツクラブを訪れた。ジムはとても美しかった。施設全体が芸術の域だった。大規模で、とても感じがいい。ジムにたくさんの女性が来ているのも嬉しく思った。ほんの短時間しかいなかったが、ボクシングと柔術が人気があるように見えた。

サイゴンスポーツクラブでは、総合格闘技の重要性とベトナムでの格闘技の歴史についてビーと話した。

ビーとのインタビューは特別な時間だった。「故郷」で戦えることをとても喜んでいるようだった。彼女は生まれてから6歳になるまでをベトナムで過ごしている。

ビーはベトナム語も話せる。彼女によると、ベトナムの人々はこのとてもユニークな格闘技イベントの開催を心待ちにしているという。また、ベトナム初の大会が終わる頃には、格闘技に興味を持つ人口がもっと増えるに違いないとビーは言う。

今回のイベントはキックボクシングとムエタイの試合のみだが、ベトナムは総合格闘技を受け入れる準備ができているとビーは考えている。プージャ・トーマルとのムエタイの試合に勝つ気は満々だが、この大会を終えたら総合格闘技に戻ることを望む。ビーは、ONEが将来的に総合格闘技も含めた大会を開催してくれることを心から期待していると言う。

彼女の期待を胸に刻み込みつつ、ビーとプージャの対戦は今大会で一番面白い試合の一つになるのではないかと私は考えている。

ビーはタイミングの取り方がうまく、リーチではほとんどの対戦相手に及ばないものの、1分未満でKO勝ちを決めたボゼナ・アントニヤー戦が示すように破壊的なKO力を持つ。本人曰く、リーチが最も短い選手としてSHERDOG(※編集部注:英文格闘技ウェブサイト)にも載っているそうだ。

だが、ビーはそれを笑い飛ばし、自分の個性として完全に受け入れている。私も同感だ。体をうまく使うことができれば、リーチの長さは関係ない。

リーチの短さは「弱点」かもしれないが、彼女のようにユニークな選手は非常に難しい対戦相手だ。サウスポーのビーは、リーチが短かったおかげでタイミングを磨かざるを得なかった。対戦相手を自分のゲームに引き込む能力に長け、攻撃に転じる時には力強い打撃や蹴りを効果的に放つ。

一方のプージャは「攻める」タイプの選手だといえる。攻撃のチャンスを忍耐強く待つことはあまりなく、相手から一撃受けたらコンビネーションを次々に繰り出して応戦するだろう。意味のないコンビネーションで威嚇でもしようものなら、しっぺ返しをくらうことになる。

ビーとは異なり、プージャはスタンスを頻繁に変えるため、動きが予測しづらい。ウーシューの国内チャンピオンで、力強い右パンチが得意だ。

それに加え、プージャはベテランで、対戦相手のホームで戦ったこともある。ジャカルタでのプリシラ・ヘルタティ・ルンバン・ガオールとの試合を思い出す。プージャは現地のファンたちを激怒させて国を去った。彼女が他の選手たちが辞退したこの試合を受け入れたのには、理由がある。「国の英雄」をそのホームで打ち負かす能力が自分にはあると知っていたからだ。

この試合の展開はまったく読めない。そして、それは他の試合にもいえる。

(※9月6日、ビー・ニューイェンは、プージャ・トーマルにスピリット判定で勝利した)

それにしても、先週ベトナムに訪れることが決まった時には上に書いたことを何一つ予想していなかった。格闘技は人気がないと思っていたのも、まったくの間違いだった。今週末のイベントのためにベトナムに戻るのが、今から待ち切れない!