サイドストーリー

カンボジアの誇り、打撃格闘技クン・クメール

2020年6月4日

カンボジアの格闘技、クン・クメールは奥深き古代文明から長い旅路を経てONEチャンピオンシップのステージにたどり着いた。

今ではONEのサークルにクン・クメール格闘家が足を踏み入れるたび、世界中の格闘技ファンがその戦いに魅了されている。

この記事では、クン・クメールについて紹介する。

豊かな格闘技の伝統

Chan Rothana ONE DREAMS OF GOLD

カンボジア北部に900年前に建てられた寺院、アンコールワットの壁にはユタクン・コム(Yutakhun Khom)と呼ばれる格闘技の絵が彫られている。この古代の格闘技から、現在のクン・クメールは生まれた。

様々なキックやパンチ、膝蹴り、そして今では最も恐れられている肘打ちを駆使していた ユタクン・コムは、アンコール帝国の興隆に重要な役割を果たしたかもしれない。

一時は東南アジア大陸のほとんどを支配したアンコール帝国は、その当時最大の中心都市となり、多くのカンボジアの伝統的な格闘技を生み出した。

フライ級の天才、チャン・ロタナは父親からユタクン・コムを学び、現代総合格闘技の技と組み合わせることでその伝統を守り、カンボジアの格闘技の伝統を引き継いできた。

だが、この古代格闘技が、どのように今の私たちの知るクン・クメールへと進化を遂げたのだろうか?その答えは、スポーツとしての魅力にある。

国の誇りと娯楽

Nou Srey Pov

カンボジアにおいて、クン・クメールは単なる格闘技の枠を超えた。格闘家にとっても、熱狂的なファンにとっても、クン・クメールはライフスタイルであり夢中になれる娯楽となった。

テレビ中継されるイベントには国中から多くのファンが押し寄せ、観客席をぎゅうぎゅうにする。クン・クメールの魅力と揺るがぬ人気を象徴するかのような光景だ。

バイヨンとPNNスタジアムフライ級王者で、現在ONEスーパーシリーズでカンボジアを代表するソク・ティーは、そのことをとてもよく知っている。

クン・クメールはまた、老若男女問わずに虜にしてしまうことでも知られている。

カンボジアの娯楽の代表とでも呼べるこの格闘技は、今や国境を越え、クン・クメール世界チャンピオン、ノウ・スレイ・ポブのような新人格闘家たちの人気により、世界中で人気を得始めている。

若手のストライカー、ノウ・スレイ・ポブは2019年前半、「ONE: CLASH OF LEGENDS」でタイの石毛里佳を倒し、インパクト大のデビューを果たした。そして今、ONEという新たなステージを活用し、カンボジアに恩返しをしようとしている。

「カンボジア人女性の強さを見せたい」と、スレイ・ポブは言う。「そして、すべての女性に目標を叶えることは可能だと伝えたい」

カンボジア系アメリカ人のソヴァナリィ・エムも、地元のファンの熱い応援のおかげで戦い続けることができると語る。

エムはアメリカで生まれ育ったが、それでも祖国カンボジアで応援してくれるファンから励まされるという。

「ただ試合をするためにカンボジアに来るのだと思っていた。地元のファンからこんなに応援してもらえるとは予想していなかった」と、エムは話す。「たくさんの愛とサポートを感じて、心から感謝している」

クン・クメールのエルボー

ベテラン格闘家のリン・サロスは、2018年6月「ONE: PINNACLE OF POWER」でのマリオ・サティヤ・ウィラワン戦で、カンボジア格闘技の特徴といえる肘打ちの破壊的な強さを見せつけた。

だが、多くのファンは将来的にそれを超えるパフォーマンスが見られると信じている。

ONEで最もアクティブなカンボジア人アスリートの1人、コン・シチャンはクン・クメールの肘打ちは自分たちのスタイルをよりユニークでエキサイティングなものにしていると主張する。

「クン・クメールの肘打ちは他とは違っていると思う。自分たちはクリンチを避けるためにインサイドからタイトに打ち込むのを好む」と、シチャンは説明する。「キックや肘打ちが多く決まる試合はよりエキサイティングだ」

クン・クメールの精神

Chan Rothana ONE DREAMS OF GOLD

年月を経て、クン・クメールはカンボジアの格闘技として盛大なカムバックを果たした。

古代の伝統を受け継ぐ少数の師範のもとで、今の世代の格闘家たちは妥協を許さないスタイルのトレーニングと試合で鍛えられている。

カンボジアのトップ総合格闘家、ロタナほどこの伝統とトレーニングを体現している者はいないだろう。ロタナは現在、強敵とうたわれるアスリートを相手に3連勝し、記録を更新中だ。

2019年8月の「ONE: DREAMS OF GOLD」で、ロタナはグスタボ・バラート(キューバ)に勝利し、再度その格闘家精神を見せつけた。

あの試合のようなパフォーマンスがもっと見られれば、2020年、クン・クメールは新たな高みへと昇りつめるだろう。

「自分の精神が傷つくよりは、体が傷ついた方がいい」と、ロタナはONEでクン・クメール格闘家として戦うことについて語った。

「自分にとって一番大切なのはファンのみんなだ。毎試合、自分の勝利を願ってくれる。とても嬉しいし、すべての戦いに勝とうと必死で努力したいと思うよ」

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