キックボクシング

思い出の一戦:アライン・ンガラニのボブ・サップ戦

2020年6月15日

アライン・ンガラニ(香港)はいつも、その人生に与えられた試練を乗り越えてきた。ボブ・サップのような体重150キログラムの巨漢を相手にした時もそうだ。

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Does size even matter?

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サップは格闘スポーツで最大級の体格を持つ選手であり、K-1ワールドグランプリとPRIDEの大会でファンを沸かせて一躍、大スターになった。だから2009年にサップと対戦することになった時、ンガラニは厳しい戦いになるだろうと分かっていた。

「ボブ・サップについて聞いていたし、過去の試合も見たことがあった。本物の獣のようで、自分の2倍のサイズがある」とカメルーン生まれのストライカー、ンガラニは説明する。

「彼は大柄でとても強いけれど、知っているかい?自分はとても楽しみだったんだ。挑戦することが大好き。だからこそ今の自分がある。試合を用意してくれれば、自分はそこに出て行ってベストを尽くす。勝っても負けても」

「全ては挑戦。できないことはないと信じている。ただそのことを信じて、自信を持たないといけない」

サップと直接会う前に既に、ンガラニは自分が何をやろうとしているかに気づく機会があった。

「自分たちが会う予定の場所に来て、ドアの外で靴を脱いでいた。ものすごく大きい靴だった。信じられないくらいだったよ」とンガラニは笑いながら振り返る。

もちろん、身長180センチメートルのンガラニは小柄ではない。筋骨隆々とした素晴らしい体格の持ち主だ。だが、第2の故郷、香港で両者が試合前のメディア撮影に臨んだ時、ンガラニはサップの前で小人のようだった。

カメラを持って通りを歩いていると、見物客はサップの陰に隠れたンガラニの姿がほとんど見えないほどだった。

「自分たちは賑やかな通りを歩いて、向かい合ったり、写真を撮ったりしていた。その時、自分は彼の本当にすぐ近くにいた」

「おもしろかったよ。自分が1人でいる時はたいてい、みんなは自分に目を向けるのに、その時はみんな彼だけしか見えなかった。自分の姿を見ることができなかったんだ」



だが、格闘技はサイズが全てではない。巨漢のサップは既にその体を生かしてK-1のレジェンド、アーネスト・ホーストを相手に2勝を挙げていたため、ンガラニは別の方策を考えた。

力業にだけに頼るのではなく、スピードや動きを生かしてサップに対抗しようという計画だ。

「自分たちが練った戦略は体のキレを研ぎ澄ますこと。距離を保って、爆発的に出たり入ったりできるようにね」

「彼は軍隊みたいで、自分よりも力があることは分かっていた。ホーストがやったように、打ち合いなんかはできなかった。ハンマーのような打撃に捕まって一撃で破壊されてしまう。だから彼と向き合って殴り合いをするつもりはなかった。賢く立ち回らなければならなかった」

マウロ・チリリ戦を前にサークルを歩き回るアライン・ンガラニ

2009年10月7日、ついにイベントの日がやってきた。

その時には、ンガラニのゲームプランは完璧であり、心肺機能は限界まで高められ、そしてうまくやれるという自信を備えていた。  キックボクシングとムエタイの世界王者に4度輝いたンガラニはまだ緊張していたが、ジムでこれまで取り組んできたことを実行する時がきた。

だが巨漢のサップが突進してきた時、どんなに準備してきたトレーニングも役には立たなかった。

「試合当日はとても興奮した。彼を目の前にして緊張したが、やらなければならなかった」

「ベルが鳴るとすぐに彼は自分を追い回してきた。たった15秒、20秒追いかけられただけで、ものすごく大変だった」

「試合が始まったとき、通常はまず慣れたいと思うだろう。でもグローブにタッチし合ったと思うと、彼はこっちに向かって走ってきて、自分は完全に気勢をそがれた。キックを放ち距離を保つという戦略はどこかに行ってしまった。彼はそうさせてくれなかったから、少し途方に暮れた」

幸い、ンガラニは過去の経験を活かして落ち着きを取り戻し、台本通りに戻ることができた。

最初の嵐のような攻撃を乗り切った後、ンガラニは彼の戦略が奏功する可能性があることを示し、そのまま戦い抜き、第2の故郷の観衆の前で劇的な判定勝ちを収めたのだった。

「少しして、慣れてきて落ち着きを取り戻し、ペースを握ってそのまま行ける方法を見つけた」

「相手が打撃で来ようとする時、自分は出たり入ったりして当てられるのを避けた。そうやって最後まで戦い続けた。素晴らしい夜だった。どんなことでも成し遂げられると示す必要があったんだ!」

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