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青木真也のONE入門:総合格闘技、多様な練習スタイル

2020年5月5日

世界的に新型コロナウイルスで制限が掛かっていて、大会開催はもちろんのこと、練習も国によっては外出規制で、スムーズにいかない状態が続いています。世界中が不安を抱え、ストレスがたまる生活を送っています。少しでも早くこの事態が落ち着くことを祈っています。

ファンの皆様が試合を見れないことにストレスを感じるように、格闘技選手も試合練習ができないことにストレスを感じています。

誰のせいでもなく、どうしようもないことなのですが、練習が普段通りにできないことにストレスを感じてしまうのが本音です。でも前向きに、強い気持ちを作って前に向かっています。

日本国内の状況は自粛要請であるので、プロ選手で少人数集まって練習をしていますが、これも普段のように人数が集まるわけでもなく、3、4人で練習をしたり、トレーナーとマンツーマンで練習をしたりと制限のある中で工夫してやっています。

これは日本人の国民性や僕の性格もあるとは思うのですが、資源が少ない中で工夫してやっていくかをずっと考えてきたので、どんな状況になってもその中でのベストを模索してやっていく姿勢が遺伝子レベルでも教育でも根付いているように思います。日本人は勤勉で我慢強い国民性なのです。

今の状況の中で如何に練習をして行くのかもあるのですが、総合格闘技の選手の場合はそれぞれ練習のスタイルが異なります。

僕がやっていた柔道では決まった練習方法が確立されていたのですが、総合格闘技には決まった練習方法がないのは、面白い話です。総合格闘技の競技性として、技術の幅が広く、同じ競技でも異なるタイプの選手がいるので、練習体系も大きく異なるのだと考えています。

サッカーのフォワードとゴールキーパー、野球のピッチャーとキャッチャーの練習が異なるように、同じ総合格闘技選手でもストライカーとグラップラーでは練習が違うし、その中でもまた細分化されるので、正しい総合格闘技の練習はないと思っていますし、選手個々が考えて自分に合った練習体系を作って行くことが大切になってきます。

僕はその中でも1つのジムで練習をするのではなく、いくつか自分が練習をするジムを持って、そこに選手が集まったり、習いに行って練習を組み立てています。1つのジムで1人のコーチに師事するのではなく、大学の授業のように自分で授業を履修して自分のカリキュラムを作っています。

ノマドワーカーなんて言葉が日本では流行したのですが、ノマドワーカーの格闘技版だとイメージしてもらうとわかりやすいのではないでしょうか。

誰か1人の先生に師事しているわけではないので、自分が練習をコントロールしなければいけないし、強度や練習の方向性の加減は日々自分で考えてやっています。僕が手帳を常につけているのは割と有名な話ですが、それは自分の練習を把握するためにつけています。単純に練習量で比較すれば、10年前と今では半分になっています。

一番練習をしていた時には、1時間半から2時間の練習を日に3回していましたが、今は1回か出来ても2回です。グラップリングのスパーリングを一番やったときは1日25本やっていましたが、今は6〜8本。それも自分の年齢やコンディションを考えて、試行錯誤してきた結果です。

日本の選手は、自分のジムでは習うことのできない技術やレベルの高い練習相手を求めて他のジムに出向く出稽古をよくします。

出稽古に関しては様々スタイルの練習相手と練習ができることが一番のメリットであるし、非日常の緊張感を味わいたい気持ちもあると思っています。試合前だけで出稽古を増やす選手もいて、それは試合にできる限り近い緊張感を試合前に感じておきたいからではないでしょうか。

試合前と通常時期では練習が変わるのかも選手次第の部分があります。いわゆる追い込み時期を作るのかどうかです。

僕の場合は試合の有無に関係なく、一定の練習をするようにしています。これは年齢と経験があるのもあるのですが、性格的にコツコツやり続けることが好きなので、大きく練習を変えずにやっています。

これを真面目と評されることもあるのですが、格闘技と身体を動かすことが好きなので、別に真面目なわけではないです。僕の知る多くの選手は試合前と試合期間以外では練習を分けています。それが教科書的には正しいとされていますが、選手が考えて納得していれば、選手によって違っていいと思っています。

総合格闘技は選手によって練習体系も練習の位置付けも変わってくるので、選手のSNSなどで投稿された練習の情報を見るときのポイントにして頂けたら、試合を見る時の楽しみ度合いや見方も変わってくるのではないでしょうか。

早く試合皆様の前で試合ができることを祈りつつ、おしまいとさせていただきます。

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