サイドストーリー

ミーシャ・テイト通信:両国大会、ション・ジンナンとアンジェラ・リー戦を前に

2019年9月26日

ミーシャ・テイトは、ONEチャンピオンシップ副社長であり、総合格闘技で数々の世界タイトルを手にした女子格闘技界のパイオニア。不定期配信コラム「ミーシャ・テイト通信」、今回は10月13日(日)に東京・両国国技館で開かれる「ONE:CENTURY 世紀」朝の部のメインカード、ション・ジンナンアンジェラ・リー戦についてー。

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今年、最も注目を浴びた女子の試合といえば、東京で開催された「ONE: A NEW ERA 新時代でのアンジェラ・リーとション・ジンナンの対戦だろう。

初試合もすでに十分ワクワクするものだったが、「ONE: CENTURY 世紀」の第1部「ONE: CENTURY PART I 」では、同じ会場で2人の再戦が見られる。今からもう待ち切れない。

リーは今年3月に階級を上げ、ONE女子ストロー級で世界チャンピオンのションに戦いを挑んだ。試合には負けたものの、5ラウンドを通じて非常に勇敢に戦った。リーの様々な才能を感じられたパフォーマンスだった。今回の、リーの女子アトム級世界タイトルを賭けた防衛線も、同じくらい良い試合になると確信している。

リーの心の中にめらめらと燃えさかる炎が見えるようだ。これまで負けたことのない自分の階級での試合は、威信を取り戻すチャンスだとわかっているはずだ。

一方、ションはどの戦いでも自分の力を証明しなくてはいけないと感じているようだ。考えてみると、まったくクレイジーだ。すでに、世界でもトップクラスの格闘家なのだから。

ONE Women's Strawweight World Champion Xiong Jing Nan ready for her battle with Angela Lee at ONE: A NEW ERA

ションは中国の格闘技界で最も有名なインフルエンサーの一人だ。すでに世界王者であるのにもかかわらず、ションほど意欲に満ちた選手は他にいない。彼女ほど成功した格闘家がそこまでのやる気と決意を見せるのは、本当に素晴らしいと感じる。

今回のようなケースでも、勝てる可能性の高い自分の階級に留まることを選ぶアスリートの方が多いだろう。だが、ションはそうではない。自分がより良いアスリートだと証明したいのだ。強くしなやかに、柔軟に戦う能力があることを見せるために、トップクラスのアスリートを対戦相手に選んだ。

ションは3月以来、試合をしていない。一方、リーはストロー級で自分を試し続け、7月にはマレーシアのクアラルンプールでミシェル・ニコリニと対戦した。

8度ブラジリアン柔術世界チャンピオンになったニコリニを相手に、リーはまたしても不本意な結果とはなったが、今回、ついに自分の階級に戻る彼女にとっては、新たな意欲を燃やすきっかけになっただろう。

リーはニコリニとの戦いで多くを学んだはずだ。リーにとっては、やりづらいスタイルの相手だった。クリンチを避けなくてはいけない試合は初めてだったからだ。その感覚は、私も個人的に共感できる。ニコリニのゲームプランは完ぺきだった。

Angela Lee grapples with Michelle Nicolini

幸運なことに、私は数年前、まだONEのメンバーになる前に両選手のグラップリング(組み技)を体験する機会があった。何度かのセッションから言えるのは、それぞれが異なるグラップリングのスタイルととても効果的なテクニックを持ったアスリートであるということだ。

ニコリニの寝技の際にダメージを避けるスキルは素晴らしいと思った。だが、スタイルの違うリーにとっては大きなチャレンジとなった。おそらく、リー自身も何が足りなかったか気付いていると思う。

リーにはとても素晴らしい家族がコーチとしてついており、みんながリーのキャリアに熱心に関わっている。きっと、ニコリニとの試合でのリーのパフォーマンスも詳細に研究し、分析しているはずだ。リーはそこから成長するだろう。確実に、これまでのキャリアの中で最も大きな進化の一つになるはずだと私は思う。

リーは、今のところ、自分の成長曲線を眺めてそこにのびしろを見出すなんてことはしたことがないだろう。その必要がなかったからだ。Ronda Rouseyと対戦した時の私も同じだった。それまでのキャリアをすいすいと前進してきて、Rouseyとの試合で初めてスタイルをまったく変えることを余儀なくされたのだ。リーも、同じような体験をしたのではないかと感じている。

リーはニコリニの試合から大きく成長するだろう。おそらく、ションとの対戦よりも。ションとの戦いではミスと呼べるものは何もなかったし、相手を窮地に追い込んだ場面もあった。ひどく強固なサブミッションに持ち込んだ時は、ションもゲームオーバーだと誰もが思ったほどだ。

Angela Lee locks in an airtight armbar submission on Xiong Jing Nan at ONE: A NEW ERA

あの場面は、最後に書いておきたい話につながる。ションの揺るがぬ気概と勇気についてだ。

ションは気概の塊といってもいいだろう。鉄の意志を持ち、決めたことはやり通す。世界王者になるためにどうあるべきかの、最良の例だ。

リーとの試合の最終ラウンドでサブミッションを決められそうになったあの時こそが、ションの世界チャンピオンとしての精神力が最も輝いた瞬間だった。あそこで新たに猛攻をしかけフィニッシュを決めたションの戦いっぷりはまさに花火のようで、人間離れしていた。揺るがない精神力とハートが、ションを最高の世界王者にしている。

最終ラウンドでノックアウトを決める力がどこに残っていたのかわからない。そんなエネルギーや爆発的な勢いを最後まで保っておくことは、本当に難しいのだ。だからこそ、ションがどれだけのトレーニングをしてきたかがわかるだろう。

ションは試合にもトレーニングにも全身全霊で臨む。前回の試合には徹底した準備をしていたし、リーが自分と同じくらい強靭な精神力の持ち主だとわかっていた。リーはだんだんと力を弱めていくようなことはない。どのラウンドにおいても全力で向かってくる。だが、ションには自分の限界を超える準備ができていた。精神的にも、肉体的にも。

ONE: CENTURY PART I」での両者の再戦に関して、楽しみな点はいくつもある。チャンスをつかみ攻撃を決めるのはどちらか?ションはリングに立ち続けることができるだろうか?それとも、リーがテイクダウンに持ち込むのだろうか?

初戦では、リーが上の階級でどう戦うかが注目の的だった。今回は逆に、ションがアトム級にどう適応するかが見どころだ。

前回の試合も早く見たくてたまらなかったが、今回の再戦についてはワクワクするどころの騒ぎではない。もしリーが勝てば、この2人のライバルの勝敗を決める第3戦が見られる可能性もあるのだ。

両者が真っ向からぶつかり合う時に何が起こるかは予想がつかないが、どちらの階級であれ、ひとつだけはっきりしていることがある。私は必ず、その場で観戦しているだろう。座席から落っこちそうなほど前のめりになりながら!

東京・両国国技館 | 10月13日 (日)  | 中継:ONEチャンピオンシップ公式アプリで生中継(無料)

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「ONE: CENTURY 世紀」は、さまざまな格闘技から28人の世界チャンピオンが参戦する、史上最大の世界選手権格闘技イベントだ。フルスケールの世界選手権格闘技イベント2大会が同日開催されるのも、史上初めてのことである。

複数の世界タイトル戦、世界グランプリチャンピオンシップ決勝戦3試合、そして世界チャンピオン同士の対決をふんだんに取りそろえ、ONEチャンピオンシップが東京の両国国技館で新地平を切り拓く。