【12/9大会】24歳でムエタイを始めたアレックス・ロバーツがONEの世界戦出場者になるまで

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アレックス・ロバーツ(オーストラリア)は、夢に向かって努力を始めるのに遅すぎるということはない、ということの生きた証だ。

12月9日(土)の「ONE Fight Night 17」で、ロバーツはONEデビュー戦となるONEヘビー級ムエタイ初代王座決定戦に出場。ONEライトヘビー級キックボクシング世界チャンピオンのローマン・クリークリャ(ウクライナ)と初代タイトルを争う。

現在34歳のロバーツがムエタイを始めたのは20代半ば。それから10年、情熱と不屈の精神で世界タイトルをかけて戦うまでに急成長を遂げた。

この記事では、タイ・バンコクのルピニー・スタジアムであるONEデビュー戦を前に、ロバーツのこれまでの道のりを紹介する。

格闘技をさせてもらえなかった子供時代

ロバーツは西オーストラリア州の州都パースで生まれ、 同市郊外のウォリストンで生まれ育った。

活発な子供で、同国で人気のスポーツであるオーストラリアンフットボールをしていたという。

「両親と3人姉妹と一緒に郊外で育った普通の子供だった。オーストラリアンフットボールをしたり、あちこちでけんかをしたりね。だから、自然と自分はそういうことが得意になった」

家庭環境には恵まれていたが、学校では問題児だった。

当時はアクション映画のヒーローに憧れ格闘技をしたいと思っていたが、素行の悪さのために両親は許してはくれなかったという。

「アーノルド・シュワルツェネッガーやジャン=クロード・ヴァン・ダムの映画をかなり早い時期から見ていたと思う。(ヴァン・ダム主演の米国映画)『キックボクサー』なんかをね。こういうものから影響を受けながら育った。子供の頃からアクション映画をたくさん見て、自分もそういう映画の主人公のようになりたいと思ったんだ」

「子供の頃に両親は1回か2回、クラスを受けさせてくれた。けれども、『これはまずい、格闘技を通じてもっと暴れん坊になる』って思われた。だって、小学校の頃は、校長室に呼び出されてばかりだったから」

「それですぐに格闘技をやめさせられて、普通のスポーツをするようになった」

「激しくてシンプル」ムエタイを選択

10代から20代前半にかけてオーストラリアンフットボールを続けた。それで収入を得ることはできなかったが、体を動かすのにはちょうどよかった。

だが、それでもけんかに巻き込まれることがあった。そこで大人になって自身のやりたいことを選べるようになったロバーツは、悪いサイクルを断つために格闘技を始めることにした。

「24歳のとき、気軽な気持ちでムエタイを始めた。ちょっとトラブルに巻き込まれることもあったから。ムエタイは自分が得意なスポーツだと思ったし、若い男性特有の有り余るエネルギーをぶつけるのに最適だと思ったんだ」

「『シナジー・アンド・タイ・ボクシング・ピット』というジムに入って、すぐに夢中になった。」

「ムエタイの前にボクシングのクラスを取ってみたんだが、そこでは10連コンビネーションを練習していた。そして、ジムの反対側を見ると、(同ジムのヘッドトレーナーの)ブレア・スミスと男の子たちがキックやヒザ、エルボーの練習を一生懸命していたんだ。もっと激しそうでシンプルに見えて『こっちのほうが自分には合っている』と思った」

そしてすぐさま大会に出たいと思うようになった。

スポーツではただトレーニングをして新しい技術を学ぶだけで満足する人もいるが、ロバーツの心の中には燃え盛る闘志があった。このため、リングで戦うことは運命付けられていたのだ。

ロバーツはこう振り返っている。

「すぐにファイターになりたいと思った。リングに入って実力を試したいと。とても原始的なことだ。男のなかには、競争したいという思いを抱えた者もいるんだ」

「戦うのは好きだし、強い相手と戦うのは好きだ。勝つのは最高の気分だ」

子供の頃は格闘技をを許してくれなかった両親は、ロバーツの真剣にムエタイ打ち込む姿勢を認め、今ではプロとしてのキャリアを応援してくれているそうだ。

「家族はみんな、自然な成り行きだと思っていた。両親には心配されたし、今もされている。だから実は生で見るのは耐えられないからって、試合には来てくれないんだ」

「でも家族はいつも支えてくれている。両親以外の家族はいつも試合に来てくれる」

ファイター専門のクリニック開設

ロバーツは世界チャンピオンになるために努力を重ねる一方、理学療法士になることも目指していた。

そして『ファイト・フィジオ』というクリニックを開いた。怪我に悩まされた自身の経験から、他の選手が最高のコンディションでリングに上れるよう応援したいと思ったからだ。

「これまであちこち怪我してきた。自分は全力で戦うタイプだから。何かをちゃんとやり遂げたいと思ったら一生懸命練習をするし、全力で戦う。だが、それは怪我につながることもあるんだ。だから、怪我を治す方法を学ぶべきだと思ったんだ」

ムエタイのキャリアとクリニックの二足の草鞋は簡単なことではないが、やりがいはある。それに、理学療法士としての知識を試合準備にも生かすこともできる。

「いいライフスタイルを作り上げた。6時に起きて、3時間働いて、朝に2時間トレーニングする。そしてまた3、4時間仕事をして食事を摂って、夜にトレーニングを3時間する」

「平日に他のことをする余裕はあまりない。でも、そのおかげで今があるし、楽しみながらやっているよ」   

「(理学療法士の仕事に集中するためにファイターをやめようと思ったことは)1度もない。格闘技がなければ、間違いなく自分の人生空っぽだっただろう」

夢が叶い始めた10年目

他の選手に比べて遅めのスタートだったが、懸命な努力が実り、ほぼ前例のない成功を収めるようになった。

地元の大会から始め、そして州、全国そして国際的な舞台まで上り詰め、今年10月にはWBCヘビー級ムエタイ世界タイトルを獲得した。

ここに到達するまで10年を要したが、そこからはとんとん拍子に話が進んだ。世界タイトルの獲得から数週間後、世界最大の格闘技団体ONEチャンピオンシップから同団体に参戦しデビュー戦でONEヘビー級ムエタイ初代世界王座をかけて戦わないか、というオファーを受けたのだ。

急激な事態の進展を振り返り、ロバーツはこう話している。

「(WBCのタイトル獲得は)夢が叶った瞬間だった。(英国人ファイター)リンドン・ノウルズという偉大なチャンピオンと、素晴らしい試合ができた」

「このおかげでチャンスに繋がった。今現在、人生で起こっていることは最高だ。夢じゃないかと思うことすらある」

ロバーツは、世界有数のストライカーであるクリークリャとの対戦を楽しみにしている。

ONEライトヘビー級キックボクシング世界チャンピオンのクリークリャは2019年のONE参戦以来無敗としている強敵だ。だが、ロバーツはもうひとつの大きな夢を実現させようと意気込んでいる。

「前回の試合から1ヶ月しか経っていないが、調子はいい。いつものように健康で、準備はできている。だから『これは完璧なタイミング』と思ったんだ。年内にもうひとつ大きなことを成し遂げて、クリスマスにボーナスだって持って帰れるかもしれない」

「勝ってベルトを獲得して、そして防衛したい。ONEで戦って、階級を一掃して、トップのままで引退したい」

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