【11/16大会】キックの鬼才バースがONEデビューするまで

Jorina Baars 42

最強のパウンド・フォー・パウンド(階級を超越して与えられる最強の称号)のストライカーの一人、ヨリーナ・バース(オランダ)が、ONEチャンピオンシップにデビューする。

11月16日(土)に迫った「ONE:AGE OF DRAGONS」で、クリスティーナ・ブロイアー(ドイツ)とフェザー級キックボクシングで対戦する。
31歳のバースはこれまで主に、欧米を舞台に戦ってきた。中国・北京で開かれる今回のイベントへの挑戦は、アジアのファンに向けてアピールする絶好の機会になると彼女は考えている。目前に迫ったONEデビュー戦を前に、キックボクシングの鬼才、バースの全てを紹介する。

のびのびと育って

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バースは北海に面したオランダの町デン・ヘルダーに生まれ、両親と弟と共に暮らしていた。北ホランド半島にある海軍の町は、バースが成長するのに理想的な場所だった。

「私が住んでいる場所は静かで落ち着いている。ビーチにも街中にも見どころがたくさんある。欲しいものは何でもここで手に入る」

「ほとんどの時間を外で友達と過ごした。サッカーをしたりとか、木に登ったりとか、そんなことをして遊んだ」

バースの家族は結びつきが強かった。彼女が12歳の時に両親が別居したにもかかわらず、消防士の父、地元の海軍で管理職だった母と仲が良かった。

バースは学校では一生懸命勉強し、トラブルも起こさなかった。それは主に、空いた時間でキックボクシングの技術を磨くのに忙しかったからだ。

「私は優等生だった。毎日夕方の時間をトレーニングに充てたかったから、一生懸命勉強した。1時間の昼休みに学校で宿題を終わらせていたから、夕方にジムに行くことができた」

幼いの頃の夢

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バースがキックボクシングを始めたのは7歳の時だった。他のスポーツに挑戦したこともあったが、友達の後を追ってキックボクシングを始め、そこからはキックボクシング一筋だった。

「合気道、サッカー、テニス、バスケットボールなど、たくさんのスポーツを試した。でも7歳の時に学校の友達が、キックボクシングの教室を見に行こうって誘ってくれた」

「だから私は言ったの。『いや、見に行くんじゃなくてやりたい』って。それで試してみたらすごく好きになった。今でも大好き。何でかわからないが、これでいいんだと感じた。素晴らしいって思った」

「何で7歳の女の子がキックボクシングなんか始めたいのかと、コーチに聞かれた。だからチャンピオンになりたいんだって言い返した。そしたら『まずは練習を始めよう』って言ってくれた」

その最初のクラスの後、バースはトレーニングを続けるようになった。

最初の公式試合は5年後だった。そしてすぐに、国内の有力選手と見なされるようになった。

「最初の試合は12歳の時のダッチ・オープン・チャンピオンシップだった。その大会で優勝し、ユースの部でチャンピオンになった。勝利と成功の味は素晴らしかった」

「15歳になる頃には、もう戦う相手はいなかった。自分と戦いたいと思う女の子は他にいなかったから。だからシニアの部に移った」

「オランダでは普通、16歳の時にシニアに移る。でも私は15歳の時に初めてシニアで試合に出て言ったの。『わかった。大人の部で世界チャンピオンになりたい』と」

悲しみを決意に

ISKA Welterweight World Champion Jorina Baars practices a body kick

急成長を見せるバースには、全てが順調に行っているように思われた。だが突然の悲劇が家族を襲う。

2006年4月15日、バースは父親が見守る中、ヨーロッパのタイトル戦で優勝した。ところが翌日、父親が急に病院に運び込まれ、17日に亡くなったのだ。

「まだ17歳の時だった。その年齢ならまだ両親のどちらもが本当に欠かせないと思う。でも父は急にいなくなってしまった」

「その後、『もう戦いたくない』って言った。もうトレーニングしたくなかった。だから友達と遊びに出かけた」

しかしバースはすぐに、落ち着きを取り戻した。

「毎日パーティしてビールやワインを飲みすぎている娘なんて、父は見たくなかったはず。父は戦い続けることを望んでいたはず。だって私はとても強かったし、父はいつも私を誇りに思ってくれた。試合があるといつだって見に来てくれた」

「グローブを持ってジムに戻り、父に誇りに思ってもらうために一生懸命トレーニングした。あの時、あのタイトルには何の意味もないと思った。でも今はとても特別に感じる。父が見に来てくれた最後の試合だったから。今、父は毎試合、天国から見守ってくれている」

完璧を追い求めて

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成功へのさらなるモチベーションを得たバースは大躍進を見せる。

オランダの国内タイトルを4つ、ヨーロッパタイトルを4つ、そして世界タイトルを6つ獲得したのだ。ラスベガスを本拠地とする格闘技団体の「Lion Fight」の女子ウェルター級世界王者、国際競技空手協会(ISKA)ウェルター級世界王者などだ。

こうしてONEへの道は開かれた。バースは大勢の新たなファンの前で試合を披露し、史上最強の地位を確立したいと願っている。

「私にとって、どの試合も重要。でもONEでの最初の戦いは非常に特別なもの」

「自分にふさわしい敬意を払ってもらっているような気がするのは初めて。このために24年間、一生懸命やってきたのだと思う」

ほとんどの人が夢見るよりも多くの功績を、バースは既に達成してきた。だが彼女はONEスーパーシリーズで、これまでで最高の称号を手に入れたいと切望している。

ONE世界王者の座を目指すバースの旅路はまず11月16日、ブロイヤーとのフェザー級キックボクシングマッチから始まる。

「ジムにベルトを飾る場所が1つ空いていたと思う。あの場所はONEのためにあったんだね」とバースは笑いながら話す。

「とても一生懸命トレーニングしてきたから、ものすごく楽しみにしている」

北京 | 11月16日 (土) | 18時(日本時間) | 中継:ONEチャンピオンシップ公式アプリで生中継(無料)

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