ソーシャルメディア

ロッタン、コンサドーレのチャナティップと「サイコー」アスリート対談

2021年7月1日

ONEフライ級ムエタイ世界王者のロッタン・ジットムアンノンと、Jリーグ・北海道コンサドーレ札幌所属でタイ代表のチャナティップ・ソングラシン、2人の偉大なタイのアスリートのオンライン対談が実現した。

ロッタンは、2018年9月から参戦しているONEスーパーシリーズで10連勝中。2019年8月にジョナサン・ハガティー(イギリス)からONEフライ級ムエタイ世界タイトルを奪って世界王者になり、以来3度の防衛を遂げている。

チャナティップは、2017年7月からJリーグ・北海道コンサドーレ札幌でプレーしており、「タイのメッシ」の異名を有する。

 同郷のよしみとトップアスリート同士ということもあり、それぞれの生い立ち、競技を始めたきっかけなどを密に語り合った2人。特に両選手が盛り上ったのは、お互いの決めポーズについて。 チャナティップがゴール後に披露する「最高!」のポーズは、元ボクシングトレーナーの亀田史郎が始め、今ではプロ野球・福岡ソフトバンクホークスの柳田悠岐選手も決めポーズとして使っている。一方のロッタンの定番はハルクのポーズだ。

この記事では2人のやりとりを詳しく紹介する。 

チャナティップ・ソングラシン: 元気?最近のトレーニングはどう?

ロッタン・ジットムアンノン:  コロナのせいであまり出来てないね

チャナティップ:  試合は何ヵ月かけて準備をするの?

ロッタン:  普通のボクサーやファイターは、月の頭から試合当日まで準備していき、15日間かけて強度を上げていく。急に強度を高めると調子が悪くなるから。例えば、いきなり朝のランニング15キロメートルの代わりに、10キロメートルから始める

チャナティップ:  今日は話せて嬉しいよ。たまに試合を見るんだ。スアキム(・PKセンチャイムエタイジム)との試合を観たことがある

ロッタン:  観客のお陰で試合は楽しい。お互いのセールスポイントを見つけなければならない。予想できない。でも試合の後はみんなブラザーだ

チャナティップ:  フィールドと似てる。試合中は敵同士だが、終わったら友達

ロッタン: その通り

チャナティップ:  それがプロフェッショナリズムというのものだ

ロッタン:  スポーツの魅力だね

チャナティップ:  ボクシングは当然疲れると思うし、もちろん痛いだろう。打たれるときは、どんな感じ? 慣れるの?

ロッタン:  最初は痛かったが、そのうち何回も打たれて、あまり気にしなくなる。痺れるくらいかな

チャナティップ:  なんて言うんだっけ?アドレナリンラッシュ?

ロッタン:  そう!エンジンが温まる感じだ

チャナティップ:  暖まったら、君はこう言う感じだよね。(拳を構えて首を振るロッタンの真似)

ロッタン:  それ!体験してみないとね。そんな感じ!

チャナティップ:  痛いよ!ボクシングって痛いよ!

ロッタン:  どう練習するかによる。たくさん練習したら、痛みはあまり感じないか全然感じない。体が慣れているから

チャナティップ:  疲れる事はある? やる気がなくなるときはある?

ロッタン:  辞めようとした時もある。たくさん試合で負けたことがある。多分5、6試合負けた。でもこの職業のおかげでいろいろな機会を得られた。新しい人生を手に入れて、親の世話もできるようになった。ボクサーはみんな何もないところから始める。この競技のおかげで経済的に安心できる。自分を変えてくれた。習慣や礼儀など、すべて

チャナティップ: 規律を持って、お互いにリスペクトしあって、友達になり、勝利の味も敗戦の味も、慈悲も知る、と

ロッタン:  子供に格闘技を習ってほしくないという人は沢山いる。不良だと思われてるから。しかし、その考え方は変えるべきだと思う。護身術と認識してもらいたい。例えば、女性なら、危ない状況で身を守るのにとても便利だ

チャナティップ:  ボクシングは全身が疲れると思うけど

ロッタン:  練習とトレーニングの2ヵ月が厳しいって言われるよ。けれど、リングの中では、2分から3分だけなのに、もっと疲れる

チャナティップ:  全力を出さないといけないからね

ロッタン: そう。しかも殴り合わないといけない。ここ(頬骨のあたりを指さして)は、2回殴られて、眉毛も

チャナティップ:  できることを引き出す。実力を

ロッタン:  顔(外見)は使わない。でも体は使う

チャナティップ:  いろいろ犠牲にしなければならないものがある。アスリートは、格闘家でもサッカー選手でも、現役の期間は短く、キャリアとして求めるのも短い。身体に厳しい

ロッタン:  自分は試合に出る数を減らしてる。身体の手当てやキープしなくてはならない。お酒など楽しむボクサーがいるが、個人的には自分は飲まない。数杯飲んでもリカバリーには時間かかる。プロでいる間は飲まないことにしている

ONE Flyweight Muay Thai World Champion Rodtang Jitmuangnon is thankful following his big title win

チャナティップ:  普段は何を食べている?

ロッタン:  ホエイ・プロテインなどサプリメントを摂る人もいるが、個人的に厳しくトレーニングして、腹筋を割って、ウェイトも使って、身体を強くする方がいいと思う

チャナティップ:  自然に鍛えるということか。こっちでは、ホエイ・プロテインなどのサプリメントは、自然じゃない(加工)食品だから避けてる。でも、体をつくるためのすべての必要栄養量をとるようにって

ロッタン:  だから自分はできるだけ普通の食べ物を食べる。なんでも食べる。ソムタム(註:東南アジア料理、青いパパイヤのサラダ)を食べたかったら食べる。何か欲しかったら、普通に食べる。試合前には制限があるけどね。お腹を壊したら戦えないから

チャナティップ:  日本では、シンプルな食べ物しか食べない。アスリートとして、控えている食べ物の1つは揚げ物だ。悪い脂質が入っているからね。野菜を食べる人もいるけど、個人的には、どうやってエネルギーを得ているんだろうって思ってたけど、しっかり身体のエネルギーになるんだね。

栄養に関してはかなり厳しいよ。寮で食事する時は、栄養がきちんと取れるようにできてる。プロのアスリートとしては、規律と、リカバリーと、完璧な食生活が必要だと思う。怪我などはしたことはある?

ロッタン:  手首だけ。ジャブを相手の頭に打った時怪我して、すごく痛かった。でも折れてはいない

チャナティップ:  捻挫? 骨は?

ロッタン:  そう、骨が痛い。未だに痛い

チャナティップ:  医者に見てもらった後も?

ロッタン:  そう、針治療や注射を受けても、痛みが治らない。注射も打ちすぎないようにしてる。その代わり、コンプレッション(圧迫刺激)を与えて、緩和しようとしてる

Rodtang Jitmuangnon celebrates his World Title victory

チャナティップ:  リングに入って、簡単に勝てそうと思える相手や、タフそうな相手と戦う。憤りが溜まったりしない?

ロッタン:  試合では色々な相手と立ち向かう。自分は身長が低いから、背が高い選手には足で頭を押される。その時は感情に流されないようにする、ではないと、負けてしまう。リングに入る度、意識しなければいけない

チャナティップ:  練習と試合はまったく別物。1つは、試合中にはすごくプレッシャーがある。2つ目は、期待がまったく違う。3つ目は、集中が切れることがある。集中力を戻さなければいけない

ロッタン:  練習と試合は全く違う。練習中では相手を研究することができるが、試合では自分と相手だけだ。教わったことはできないかもしれないけれど、状況に即興で対応しないといけない

チャナティップ:  直感に任せるということ?

ロッタン:  経験だね。ある状況では何をすべきか分かる。身を守って、役に立った経験を生かして対応しないといけない

チャナティップ:  身長が高い選手と向き合って、蹴られないようにするにはどうする?

ロッタン:  それは相手と自分の間の距離だ。遠かったら、楽に蹴られるけど、近すぎたら、相手は蹴れない。横向きになって打つことも大事だ。出来るだけ足を狙って蹴る。身長高い人は足とお腹が弱点だ。頭を狙ってKOを目指せという人もいるが、高身長の相手は、顔を打つのは簡単じゃない。お腹の方が楽。ムアントンでタイトルを防衛した時は、お腹だけ狙ってた。自分も打撃をもらったけれど

チャナティップ:  打撃をもらったのは、カウンターのためだよね?

ロッタン:  そう!攻撃したくても、身長が高い相手なら、パンチやキックをかわされて、攻められないことがある。その時は近づいてプレッシャーをかける

チャナティップ:  最初のラウンドでは相手を試してるのかな?

ロッタン:  5ラウンドあるから第1ラウンドでは焦らない。さっきも言ったみたいに、練習と試合は全く別の物だ。3分5ラウンドある。体力を全部使い切りやすい。初めから全力で行くと、もう終わりだ。少しづつペースを上げて行って、自分の一番得意なな武器で相手を倒す。先にダメージを与えた方が有利だ

チャナティップ:  父もサッカー選手だった。スピードはあるけどテクニックはなかった。子供たちにも基本を学んでほしがってた。基礎が一番大切だから。4歳の時に練習を強いられた。新聞紙を丸めて、蹴るように言われて、そこから始まったんだ。

教わったのはサッカーの基本だけだった。体格が小さいから、足を上手く使えるように教えてくれた。何か気に入られなかったら、叩かれた。13歳になって、基本を習得できたらやめてくれたけどね。

自分に強い決意があるのは、練習中の規律のおかげだと思う。たまに朝練習して、夜も練習してた。昔の田舎には、何もなかった。友達もなかった。道路で練習していた。雨の日は、練習しなくていいと思いながら、父が練習場所を見つけ出していた。コンクリートの壁を使ってボールのパスを100回したり、階段を20から40回走り登ったり、父が満足するまで練習していた。

プロになって成功する前は、色々あった。チャナティップはすごい! とは行かなかった。でも、自分が何を経験したか知っている。これが自分のストーリーだ。君のストーリーも聞きたい

ロッタン:  少し衝撃的かもしれない。泣かせるかもしれないけれど、手短に話すね。親は自分にボクサーになってほしくなかった。10人きょうだいなんだけど、両親は全員の世話ができなかったね。朝は仕事に行き、夜遅く帰ってきてた。母は葬式で皿洗いなんかしてた。自分は母と金属の切れ端を集めて、それで家族をなんとか養っていた。

ボクシングの前は、自分もサッカーをやってた。7歳か8歳のころ、サッカーを初め、サッカーはお金にならないから5、6年生になったらボクシングに転向した。

親に気付かれないように家を出て練習に行ってた。親に心配をかけないためだった。

その練習場には多くの子供がいた。自分に友達はいなかった。雨が降ったら、雨の中で1人で遊んでいた。1週間ほどこっそり(ボクシングの練習場を)見て、「一緒にさせてもらえますか」って尋ねた。ボクサーにはいくつかのレベルがある。新入りには、誰も構ってくれなかった。一生懸命、サンドバッグを蹴りまくった。上に行ってトレーナーと練習したかったけど、サンドバッグとしか練習できなかった。

1年かかって、自分の努力と決意にやっと気付いてもらえた。父に練習する許可をもらって、初めての試合は友達が風邪ひいた時に、代わりに出たときだった。初めての試合で、300バーツ貰った。とても誇りに思った。

初めての試合に出してもらえて、300バーツ。300バーツは大金だった。お小遣いは1日5バーツだったから。そしてそれは学校の給食のためで、足りない時もあった

チャナティップ:  初めての試合では、ノックアウトした?

ロッタン:  ノックアウトなし。適当にパンチ。お互い戦い方が分かってなかった。自分たちが何をしているのかわからず、闇雲に打ち合ったよ

チャナティップ:  テクニックなしでパワーのみ

ロッタン:  そう、そういう感じだった。昔はいろいろなスポーツをやっていて、サッカーも部活でやっていて、地方の大会にも出た。ボクシングジムの会長は、父に、自分はどのスポーツに集中したいか聞いた。全部はできなかったから、子供の頃からサッカーの試合が好きだったけど、サッカーはやめることに決めた。

君(チャナティップ)と話すことができてとても光栄だ。まさかこういう機会が現れると思わなかった。ボクシングとMMAのおかげで、チャナティップみたいな立派なサッカー選手と話せる機会が持てた。君のことを、タイで1番のサッカー選手だと思っている。

 例えば、MMAでは、小さいファイターは大きいファイターと戦えないけれど、フィールドでは、頭を使って、フェイクなど使いながらボールを奪うことができる。ボールのコントロールが上手だよね。そして、君はボールに優しい。ドリブルしてシュートすると思ったらしない

チャナティップ:  フィードバックをありがとう。これからも頑張るよ

ロッタン:  自分にとってはMMAのようなものだ。決着を付けなければならない、重要な瞬間がある。相手をフィニッシュする瞬間が

チャナティップ:  これからロッタン・ジットムアンノン気分で行こうかな

ロッタン:  そう、もっと熱くなって欲しい。自分は殴られたら熱くなる。君の場合はゴールキーパーを怖がらせないといけない

チャナティップ:  ハハハ、ゴールーキーパーを諦めさせることか

ロッタン:  そう、自分が相手を怖がらせるみたいに、ゴールーキーパーを怖がらせるんだ

チャナティップ:  筋肉を見せつけること?分かった

ロッタン: 見せてあげよう。ゴール入ったら「アー!!」って、叫ぶんだ

チャナティップ:  君のアドバイスを身につけて試合で活かそう。尋ねられたら「ロッタンに言われたから」って答えよう

ロッタン:  祝う時は静かだよね

チャナティップ:  見せてあげよう。「サイコー!」

ロッタン:  ハハハ、これは可愛すぎない?

チャナティップ:  この祝い方は有名な日本人ボクサーのものだよ!

ロッタン: ボクサーがこれを? 自分には似合うかな?

チャナティップ:  次にゴールしたら、自分を見てほしい。ムキムキって(ハルクポーズを)するからね

ロッタン: 次に自分が勝ったら「サイコー!」ってするよ

チャナティップ:  真剣な話、プロのサッカー選手でいなければ、人生で何していたか分からない。ルックスもないし、小さいし、馬鹿だし、勉強もできないし……。何千バーツも何万バーツも稼げなかっただろう。誰にも知られていなかっただろうし、親に頼って生きていかないといけなかっただろう。これからどうなるかわからないけど、いい親、兄弟に恵まれて、色々犠牲にして立派なサッカー選手にならなければなかった。

家族のため、国のために試合するのはとても光栄だ。色々犠牲したけれども、その価値はあった

ロッタン: 自分は、ファイターじゃなかったら、博士だね。

博士と言っても、麻薬の売人の方の。そう言う環境に育ったから。何もない若者だったし、自分の家は貧乏だったから、生活のために金属の切り端を集めていた。道でホコリを蹴り飛ばしてたのに、まさか今のようなアスリートになるとは思わなかった

チャナティップ: そういう人(麻薬の売人や中毒者)を社会から減らすのに何が必要なのかな?減らすって言うよ。廃絶は難しいだろうから

ロッタン:  彼らができる活動を作らなければならないと思う。自分も間違った道に進みそうになってたけど、そこから新しい道を選ぶかな? その環境で何も変わらず止まっていたら、状況は変わらない。

間違ったことをしてから、行動を変えるのは時間の無駄ではないと思わなければならない。そして正しい道を歩むようにチャレンジする。それから人生は前に向いていく

チャナティップ:  自分は人はみんな間違うけれど、適応して成長できるって思ってるかな。人間は欲しい物や必要なもの、それぞれ持っているからね

Read more: ロッタンがキック王座に挑戦意欲、MMA参戦も⁉︎

もっと見る

最新情報をゲット

ONEチャンピオンシップとどこでも一緒! 最新ニュース、特別オファー、ライブイベントの最高の席をゲットするため今すぐ登録を! 
このフォームを送信することにより、お客様は当社のプライバシーポリシーに基づく情報の収集、使用および開示に同意したことになります。お客様は、いつでも配信を停止することができます。