ムエタイ

フィギュアスケートから格闘技へ、リピアンスカのこれまで

2020年3月26日

ヴィクトリア・リピアンスカ(スロバキア)はケガにより、体操やフィギュアスケートの選手としての将来を絶たれた。新たなスポーツを必死に探したリピアンスカだが、格闘技でここまで活躍できるとは想像もしていなかった。

リピアンスカはまだ23歳だが、既にヨーロッパ選手権やプロアマ合同のムエタイ世界タイトルを獲得。ONEスーパーシリーズでの素晴らしいデビュー戦に続き、ONEチャンピオンシップで世界タイトルを獲得することを目指している。

次の試合に向けて準備を進めるリピアンスカが、これまでの人生を振り返る。

各国転々の幼少期

「ONE:IMMORTAL TRIUMPH」でのヴィクトリア・リピアンスカの入場

リピアンスカは1996年に、スロバキアの首都ブラチスラバで生まれた。幼少期の大半は、母と弟、そしてプロのアイスホッケー選手だった父と共に、ヨーロッパ中を移動して過ごした。

一か所に長く留まらない生活には難しい点もあったが、同時に、良いこともあったと言う。

「私はブラチスラバで生まれ、スロバキアで育った。父はプロのアイスホッケー選手で、私が12歳の時に父が引退するまでは、引っ越しをしてばかりだった」

「父はチェコ、スウェーデン、フィンランドのチームでプレーした。以前は米国やドイツにもいた。引っ越してばかりでなかなか友達ができず、子どもだった私にとっては嫌なこともあった」

「でも最近は、家族と一緒にこういう生活を経験できて良かったと思っている。たくさんの素晴らしい人に会えたし、いろいろな人にいろいろなことを学んだ。たくさん旅行して、たくさんの場所をみることもできた」

リピアンスカは子どもの頃、女の子にとってより伝統的と見なされていたさまざまなスポーツを試したが、ケガにより成功の道は絶たれた。

「生まれたときからずっと、スポーツは私の人生の一部だった。毎日スポーツを観戦したし、父や弟と一緒によく遊んだ」

「小さい頃は、体操、アイススケート、フィギュアスケートなどをやっていた。でも10代の頃にヒザをケガして1年間、何も運動ができなかった。ケガが治った時、スポーツをする生活がとても恋しくて、また何か始めたいと思った」

ムエタイとの出会い

ONE スーパーシリーズムエタイの選手ヴィクトリア・リピアンスカ

リピアンスカは、ケガから回復し、何か新しいことを試すことに決めた。そして地元の格闘技のトレーニングセンターにたどり着いた。

「ムエタイのジムに連れて行ってくれたのは、実は父だった」

「父はいつも、この種のスポーツに夢中だった。いつもテレビで見たり、記事を読んだりしていたし、オフシーズンには運動のためにボクシングをやっていた」

リピアンスカは初日からムエタイに夢中になった。最初はなかなかうまくいかなかったものの、やり続け、自分の弱点をやる気に変え、上達を目指した。

「最初のトレーニングセッションの時からムエタイが大好きになった。今までやっていたものとは全然違って、感じるものも違った。もっとやりたいと思った」

「初めてバッグを蹴った時のことを覚えているが、すごく酷かった。ものすごく痛くて、他の女の子がどうやってケガをせずにけっているのかわからなかった。トレーニングはとても大変だったし、身体的にも辛かったが、100%全力でトレーニングに取り組みたいと思っていた。もっともっとやって、毎日もっとうまくなりたいと思っていた」

母親の反対

ヴィクトリア・リピアンスカが「ONE::IMMORTAL TRIUMPH」でアンバー・キッチンに対し判定勝ち

リピアンスカがムエタイを始め、父親は熱心に応援したが、母親はそうではなかった。特にリピアンスカが試合に出ることには乗り気ではなかった。

「初めて試合に出ると言った時、母はとても怖がった。私に怒鳴りながら『だめよ!バカね。絶対許さないから!』と叫んだの」

「このことについては、たくさん話し合った。いつも母に『100%完璧に準備ができているから大丈夫。心配しないで』と言ったが、自分の子どもを守りたいと思うのは当然」

「最初のアマチュアの試合があったのは、トレーニングを始めてから1年4か月後だった。とても興奮していて、(試合中は)全てがあっという間で何も覚えていないが、リングから出た時とても幸せで、またやりたいと思ったのは覚えている」

母親は少しずつ、リピアンスカの努力を理解するようになった。今でもリピアンスカの試合を見るのはためらっているが、それでも娘の選んだ道を尊重し、ずっと応援を続けている。

「母はまだ、私の試合を見るのが好きではない。それでも今では私の一番のファンみたい」

「試合の後に母は私と話したがるから、『全て大丈夫』と伝える。私が自分のやりたいことをやって幸せで、しかも夢を叶えようとしているという事実を、母は喜んでくれているのだと思う。母は本当に私を支えてくれるし、全てにおいて私を手助けしてくれる。母がいつも応援していてくれなかったら、私はここまでこれなかったと思う」

トップを狙って

家族の支えと成功への強い決意により、リピアンスカは欧州ムエタイ連盟(EMF)欧州チャンピオンになり、世界ムエタイ連盟(WMF)のプロアマ合同のムエタイ世界タイトルも獲得した。

世界中で合計23勝を挙げ、その中にはアルマ・ユニク(オーストラリア)の姉、アマンダを相手のホームで撃破した素晴らしい勝利もあった。

この活躍により、リピアンスカはONEに参戦を果たす。そして「ONE:IMMORTAL TRIUMPH」でのデビュー戦では、アンバー・キッチン(英国)を相手に3ラウンドの激闘を繰り広げた末に、勝利を手にした。

リピアンスカは格闘技を通じて様々なことを学び、そして人生を豊かにできたことに、十分に感謝しているが、まだ満足はしていない。メジャー大会での立ち位置を確立した今、リピアンスカの目標はONEストロー級ムエタイの世界タイトルだ。そのためにあらゆる努力を惜しむつもりはない。

「旅が大好き。勝った試合も負けた試合も全て、そして全ての対戦相手も大好き」

「日々うまくなり、新しい土地を訪れ、新しいことを学び、新しい人に出会うというプロセスが、そして格闘技の全てが大好き。自分のモチベーションは、全ての涙と苦しみが(ONEの舞台で)報われること」

Read more: 【9/6大会】キッチン撃破のリピアンスカ「次回はもっと強力なパンチを」