Opinion

修斗VSパンクラス特別連載番外編:鈴木みのるに聞く

2019年10月11日

「ONE:CENTURY 世紀」夜の部「ONE:CENTURY PART Ⅱ」で、日本を代表する総合格闘技団体の修斗とパンクラスの4階級の両団体王者が激突する。決戦を前に、スポーツライターの布施鋼治が、パンクラス黎明期に船木誠勝とともに団体の顔となった鈴木みのるに王者対抗戦への思いを聞いた。

本名・鈴木実(すずき・みのる)1968年6月17日生まれ。神奈川県横浜市西区出身。パンクラス第2代無差別王者。プロレス界では第46代IWGPタッグ王者に就くなど数多く戴冠。現在は月に一度は海外遠征に出かけるなど、世界を震撼させるプロレスラーとして活躍中。

「一緒にやろうよ」

パンクラスと修斗の王者同士の対抗戦は「やっと」と「ついに」の両方ですね。長かった? しょうがない。両団体の歴史の話になってしまうけど、元を正せば、全く同じところから生まれてきたんだからさ。どちらともカール・ゴッチさんから始まった。

ゴッチさんから話を聞いたけど、佐山聡さんは一から生徒を育ててできたのがシューティング(現在の修斗)だよね。一方、パンクラスの方はゴッチさんから俺たちが「お前たちはこれからパンクラスをやれ」ということで始まった。この事実を覆すことはできない。現時点では別々の団体だけど、スタート地点は一緒なんですよ。

パンクラスの旗揚げは1993年。今から26年前の話だけど、その時点で修斗とは相いれないものだった。繰り返しになるけど、修斗は一から生徒や弟子を育てて作り上げてきたものだから、パンクラス側からうがった見方をするとアマチュア上がり。だけど、パンクラスはショービジネスの道を通ってきたプロレスラーが集まって作った団体ですからね。修斗から見たら「そんなプロレス上がりの奴らとは…」ということになるから相いれないものになるのも仕方なかった。

実をいうと、パンクラスを旗揚げする前、当時のパンクラスの代表が佐山さんと話をして「一緒にやろうよ」という話にもなっている。どちらが言い出したか記憶は曖昧だけど、佐山さんは「パンクラスだったら一緒にできる」と言っていたと聞きます。その後、佐山さんは修斗を抜けてしまい、それからパンクラスと修斗の関係は全くなくなってしまった。

この間、柔術の中井祐樹に聞いたら、我々がパンクラスをスタートする前、佐山さんから「これからシューティングはパンクラスという名前でやる」という話を聞いたことがあるそうです。それから我々がパンクラスを旗揚げするという話を聞いた時、中井は「パンクラスって佐山さんがいっていたパンクラス?」とビックリしていたみたいですよ。

同じ大きな傘の下

正直、いまの僕はパンクラスのチャンピオンも修斗のチャンピオンも知らない。そこまでいまの総合格闘技は見ていないから。でも、だからこそ今回の対抗戦が実現したのかなと思う。だから今回の対抗戦はいま両団体に関わっている人より、あの時代に関わっていた人たちの方が感慨深いものがあるんじゃないですかね。

対抗戦に関していえば、どっちが強いかなんてどっちでもいい。だっていまは同じだもの。佐藤ルミナとかが活躍していた時には俺だって少なからず意識していましたよ。あの時は難しい問題がたくさんあると思っていたけど、実は難しくなかったのかもしれない。だって総合格闘技が成熟して、ひとつのルールでやれる時代になり、やれる人間とグループだけが生き残った。

今の総合格闘技は世界のスタンダードで、何万人という競技者がいて、そのトップは何億円というファイトマネーを稼いでいる。日本にも過去に格闘技ブームという波があったけど、いまでは下火になっている。でも、逆にいうと、これでちゃんと世界で戦える舞台が整ったといえる。

ぶっちゃけ、今回の対抗戦で勝った方は日本代表ですよ。そういう闘いになるんじゃないですか。いまの俺は総合の世界を離れてずいぶん時間が経ったけど、注目しています。楽しみというよりうれしい方が先かも。ONEチャンピオンシップという資金力のある大きな傘が来たことで、パンクラスも修斗も同じ傘の下にいる。今回は客の反応より今後のための第一段階だと思う。



布施鋼治(ふせ・こうじ)1963年7月25日生まれ。札幌市出身。スポーツライター。中でも総合格闘技、キックボクシング、レスリングへの造詣が深い。五輪は北京大会以降、連続して現地取材を続けている。ミズノスポーツライター賞優秀賞受賞作の「吉田沙保里 119連勝の方程式」(新潮社)などの著書がある。Number、共同通信で格闘技コラムを執筆。テレビ東京系列の番組「格闘王誕生!ONE Championship」では解説を担当。