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シアー・バハドゥルザダに聞く「Evolve」でのコーチ法

2020年4月9日

今年1月、元修斗ミドル級世界王者のシアー・バハドゥルザダ(アフガニスタン)が、シンガポールのメガジム「Evolve MMA」のファイトチームのヘッドコーチに就任し、新しいキャリアを歩み始めた。

Evolveには数多くのONEチャンピオンシップのアスリートが名前を連ねており、バハドゥルザダの知見がすぐに、格闘家たちの成長に生かされることだろう。

ONE女子ストロー級世界王者のション・ジンナン(中国)、アミール・カーン(シンガポール)、トロイ・ウォーゼン(米国)、そしてリトゥ・フォガット(インド)などのスター選手が、バハドゥルザダの豊富な総合格闘技経験を役立てることだろう。 世界クラスのコーチ陣と共に、バハドゥルザダは選手たちのONEでの活躍を期し、指導にあたっている。

バハドゥルザダへの独占インタビューで、Evolveとの出会いや、新しい職責、さらに選手たちの成長に向けたプランなどについて明らかにする。

ONEチャンピオンシップ:選手生活に区切りをつけ、コーチングに挑戦することにした。これは自身のキャリアにとって新たな一歩だ。この決断の背景には何があったのか?

シアー・バハドゥルザダ:1ヶ月のトライアウトの間にここにいて、その時ここのコーチング法が気に入った。 新しいチャレンジがしてみたくなった。

過去15年間、高いレベルで戦う中で、多くの人々に刺激を与えてきた。アフガニスタンでは、麻薬乱用や犯罪を防止する支援をし、さらに総合格闘技を普及してきた。

ある程度まで成功し、アフガニスタンで総合格闘技の大きな文化を作ることができた。 今では、何千人ものアスリートがこのスポーツで生きている。これは自分にとって本当に意味のあることだ。

Evolveに来て、コーチングを始めた時、同じような満足感を感じた。選手がより上手くなるよう、夢を実現できるよう支え、そして選手を通して彼らの国の人々を鼓舞できる。



ONE:人生を通してやってきたことが、Evolveの国際的なアスリートたちと関係を築くのに役立ったと思うか?

バハドゥルザダ:もちろんだ。みんな一生懸命にやっている。昼も夜もトレーニングを重ね、家族や故郷から離れたり、好きではないものを食べたり飲んだりしている。

これは自分も通って来た道であり、今彼らがやっているのを見ている。やる気に満ち、夢を実現するために必死になっている。これはすごいことだ。こういう選手たちを間近で見られるのはとても刺激的なことだ。

そして、自分が大好きな総合格闘家に関わっていられる。彼らを日々、見ることができる。彼らはうまくなっているし、毎週のように強くなっていく姿を見て、別の種類の満足感を得ている。

ONE:自身の苦労と成功を知り、たくさんの選手が憧れを持っている。どう感じるか?

バハドゥルザダ:いろいろなジムを知っているし、たくさんのコーチとトレーニングしてきた。素晴らしいコーチもいれば、そうではない人もいた。だから、総合格闘技での20年に渡る経験を通して、何をしたら上手くいくか、どうやったらより強い選手になれるか、そしてどうやったら戦い方を理解できるようになるか、ということについて、自分の見識を蓄えてきた。

格闘技は身体的なものだけではない。精神的な面もとても重要だ。だから体だけを鍛えようとしてるわけではない。彼らが精神的に良い状態でいられるよう、前向きでいられるように努めている。戦いは身体的な能力が大事だが、試合やパフォーマンスについては、精神力がものを言うということを教えたいと思っている。

コーチングや総合格闘技の指導について、まず自分の考え方を理解してもらうよう努めている。「なんでこれをしなくてはいけないのか?」とか「これはトレーニングや強くなることと、どう関係しているのか?」といった疑問をもたないようにね。

こんなやり方で、自分がここ数年足りていなかったものを選手たちに提供できればと、つまり、彼らに教え、彼らにとって最高のコーチになりたいと思っている。

ONE:最高クラスのジムで、有名なコーチの下で、優秀な選手と共にトレーニングしてきた。この経験により、Evolveでの挑戦に取り組むことができると感じたのか?

バハドゥルザダ:その通りだ。打撃には2種類あり、1つはムエタイやキックボクシングの打撃であり、もう1つは総合格闘技の打撃だ。

これらの非常に異なる2つのスタイルを総合格闘技でやるのは少し工夫が必要だ。長年にわたって、自分の周りにはたくさんの素晴らしいストライカーがいて、今Evolveには数多くの偉大なムエタイ選手に囲まれている。

Evolveでのセッションから刺激を受けているが、オランダ・アムステルダムや他のジムでトレーニングしてきた20年間で、打撃についてはよく理解できるようになったと思う。総合格闘技では何が機能して、何が機能しないか。だからそれを教えようとしている。

ONE:Evolveとの提携はどのように始まったのか?

バハドゥルザダ: Evolveが素晴らしいチームだということは知っていた。ムエタイ、ブラジリアン柔術、ボクシングといった複数の格闘技の分野で、たくさんの世界チャンピオンがいる。自分のチームの一員になりたいと思っていた。

彼らがヘッドコーチを探しているという広告を見たとき、彼らにメールを送った。とてもシンプルなもので、自分が誰で、何をしてきたかを書いた。そうしたら連絡が来て「1ヶ月コーチをしてみるか」と言われた。

それで、是非やりたいと伝え、ここに来て1ヶ月のトライアルをやろうと決めた。チームには素晴らしいグラップラー、ストライカー、レスラーがいて、自分には大きな挑戦だった。でも自分のことはわかっている。その挑戦を受けたいと思った。すぐに決心はついた。

ONE:ヘッドコーチとして、世界チャンピオンを経験したコーチが周りにたくさんいるのはどういう気分か?

バハドゥルザダ:Evolveの素晴らしい点は、あらゆる分野で最高の能力を備えていることだ。最高のグラップラーがいて、ブラジリアン柔術でもボクシングでも、ムエタイでも、最高の指導者がいる。

ヘッドコーチとしての自分の仕事は、これらのコーチとどう調整するかだ。総合格闘技にとってベストだと思うことを教え、かつ、個別にベストだと思うことを教えるよう、コーチと確認していく。

みんなに同じことをさせるつもりはない。トレーニングを調整し、全てのアスリートを個別に分析している。彼らが試合を控えている時は、自分が一緒に取り組む。柔術、レスリング、ボクシングなど、彼らのスタイルにあった方法でやる。

選手たちが本能的に動けるようにすることで、彼らの強さを高めたいと考えている。試合の時に本能的に行うこと、そしてトレーニングの時に本能的に行うことに取り組んでいる。

ONE:ヘッドコーチになった今、最も刺激を受けた人物を挙げるとすれば誰か?

バハドゥルザダ:グレッグ・ジャクソン(米国の有名トレーナー)だ。自分のキャリア、人生、そして試合に対する考え方を全て変えてくれた。とても素晴らしい刺激を受けた。

ONE:Evolveに来て以降、ONEの大会では選手のコーナーに付いてきた。ONEの全体的な印象は?

バハドゥルザダ:とてもプロフェッショナルだ。アスリートを何よりも大事にする。アスリートのイメージを作っている。多くの団体に関わってきたが、ONEが圧倒的にプロフェッショナルだ。

ONE:ONEでは、格闘技のポジティブな価値を広めようとしている。このことは自身と調和しているか?

バハドゥルザダ:もちろんだ。チャトリ(シットヨートン、ONEチャンピオンシップ会長兼CEO)は優れたリーダーであり、ONEを立派に率いている。彼は人々に刺激を与え、人々が持っている素晴らしい部分を引き出すことが大好きだ。それが自分に最も影響を与えたことだ。要は敬意を持つこと。格闘技一筋で、ONEは総合格闘技を広めようとしている。

格闘技に付随する敬意、誠実さ、そして努力には本当に惹かれた。自分は相手を悪く言うのは好きではないし、そういうことはONEでは起こらない。そこが、ONEチャンピオンシップで一番好きなところだ。