【ONE Fight Night 35】新女王ステラ・ヘメッツバーガー、ブンタンとの激闘に「全局面の準備をしていた、気合いと根性で戦った」
オーストリア出身の女性ファイター、ステラ・ヘメッツバーガーは、世界の頂点を目指して日々奮闘していたが、その王座戴冠のストーリーがこんなにドラマチックなものになるとは想像もしていなかったことだろう。
9月6日にタイの首都バンコクのルンピニー・スタジアムで開催された「ONE Fight Night 35」メインイベントの女子ストロー級ムエタイ王座決定戦で、ヘメッツバーガーは同級キックボクシング王者のジャッキー・ブンタン(米国)と大激闘の末に勝利。2度のダウンを奪う最高のパフォーマンスを見せて新王者に輝いた。
完璧な準備、高い戦略が勝因に
世界トップのムエタイテクニック、怒涛のコンビネーション、そして数多くの強豪勢と戦ってきた豊富な経験値を持つブンタン。そんな強敵を相手に5ラウンドを戦い抜くだけでも至難の技だった。
下馬評も不利の中、ヘメッツバーガーは世界を驚かせた。1R、右ハイキックからの右ショートのコンビネーションでブンタンからなんと2度のダウンを奪ったのだ。これはブンタンが相手のハイキック攻撃を紙一重のスウェー バックでかわす癖を見破ってのヘメッツバーガー陣営の戦略が当たった。
プーケット・ファイト・クラブの対戦相手の傾向を注意深く研究し弱点を発見する分析・戦略の高さが、ヘメッツバーガーのカウンター攻撃を解き放つチャンスを与えたのだ。
「ダウンを先制し、さらに2度目のダウンを奪ったことが自分を信じる力を与えてくれた。何より試合前から自分の能力とチームへの信頼によって自分は勝てると信じていた。」
「全局面での準備をしていた。特定の技術を正確に実行する具体的なゲームプランを立てるのではなく、総合的でパーフェクトな準備を努めまた。中でも集中したのは左フックと、相手がスウェーバックした瞬間での対処に取り組んだが、試合でもそれを正しく実行することができた。」
逆境での不屈の精神
一方、序盤からピンチに陥ったブンタンだったが、2度のダウンから盛り返し反撃に。得意のコンビネーションでクリーンヒットを連発させ、勢いを取り戻す。チャンスから一気にピンチに陥ったヘメッツバーガーだったが、彼女はそのタフな肉体とメンタルで逃げ切る戦いを選ばず、強敵に真っ向からぶつかった。
「ただ冷静に努めた。コーナーの声を聞いて、相手が何を仕掛けても崩されず、それにカウンターを返し、戦略通り戦うことに集中した。気合いと根性で、自分ができることを全てを行うことに努めた。そんな闘いができてとても嬉しい。」

母国オーストリアの期待を背負った戦い
ヘメッツバーガーの勝利は母国オーストリアのファンの夢を背負っている。彼女のONE Friday Fightsから世界チャンピオンへの道筋は、オーストリア人選手が歩んだことのない軌跡だ。
「私は(オーストリア出身としては)初のONE Championship契約選手であり、今や初のONE Championshipのベルトを獲得したオーストリア人だ。ONE Championshipで自国を代表し、タイで自分が欧州オーストリア出身であることを示すのは素晴らしい気分。母国でこの競技の人気がさらに高まり、ファンが増えることを期待している。」
キックボクシング・ルールでの再戦に意欲
ムエタイでの世界王座を獲得したヘメッツバーガーだが、実は彼女の基盤はキックボクシングにある。ジャッキー・ブンタンの2冠の野望を阻止した後、次に目指すのはキックボクシングの王座。今度はブンタンが持つONE女子ストロー級キックボクシング世界王座への挑戦を望んでいるのだ。
「私は元々キックボクシング出身。キックボクシングの方がはるかに多くの経験を持っている。だから、チャンスがあれば、キックボクシング・ルールの王座に挑戦したい。」
「今日の私たちの試合を考えると、再戦も良い戦いになると思うし、ファンを楽しませるはず。次戦がどのような形になるか運営に任せるが、キックボクシングでの再戦は期待している。」
さらに燃え上がるハングリー精神
悲願のONE世界王者のベルトを巻いたからと言って、ヘメッツバーガーの成功へのハングリーさは衰えることがない。オーストリア初のONE世界チャンピオンの旅はまだ始まったばかりだ。
「私は以前と変わらずハングリーだ。飢えがなくなることはない。これがパーフェクトな精神状態だと思う。」
