エンク・オルギル・バータルフー

モンゴル・ホブドの広大で厳しい大地から、エンク＝オルギル・バータルフーは現代MMA界で最も将来を期待される存在へと駆け上がった。

元ONEフェザー級世界王者ナラントンガラグ “トゥンガー” ジャダンバの愛弟子として、バータルフーはONEで着実に階段を上ってきた。前へ出続ける圧力、破壊力のあるクリンチ、逃げ場を与えないグラウンド、そして打たれ強さ――それらを武器に確かな存在感を放ち続けている。

幼い頃から格闘技に心を奪われていたバータルフーは、テレビでアクション映画のヒーローを見ては、近所の子どもたちと即興の組み技遊びに夢中になった。その楽しさがやがて本格的なレスリングへの興味へと変わり、マットの世界へ飛び込んでいく。

彼の夢は、テコンドーでオリンピック金メダルを獲得し、モンゴル代表として世界の舞台に立つことだった。しかし、その道は閉ざされ、彼は新たな挑戦を求めるようになる。そして2009年、MMAに出会った瞬間、すべてが変わった。バータルフーはこのスポーツに一瞬で心を奪われた。

国内リーグから地域大会まで、出るたびに勝利を重ね、無類の強さを誇る存在へと成長。その勢いのまま、賞金10万ドルとONE本契約を懸けたリアリティ番組『Road to ONE: Mongolia』の初代シーズンに参加する。10話構成のシリーズにおいて、彼は最後の2連戦を連続フィニッシュで制し、決勝では同郷のバト＝オチル・バツァイカンを一撃KO。

観客が息をのむ“ウォークオフ”の一発で大会を制し、世界への切符をつかみ取った。